網膜剥離
目の奥には、光を感じる網膜という薄い膜があります。この網膜が、その下にある組織から剥がれてしまう病気が網膜剥離です。
網膜剥離が起こると、見える範囲が狭くなったり(視野欠損)、物が歪んで見えたり、視力が低下したりします。特に、光を感じる中心部分(黄斑)まで剥がれてしまうと、急激に視力が悪くなります。
網膜剥離の診断では、視力検査や眼圧検査などの基本的な検査に加え、瞳孔を開いて眼底を詳しく観察する眼底検査が重要です。必要に応じて、眼底写真撮影、蛍光眼底造影検査、網膜の断面を調べる光干渉断層計(OCT)、眼球内の状態を確認する超音波検査などが行われ、これらの結果を総合的に判断して診断が確定します。
治療の基本は、剥がれてしまった網膜を元の位置に戻し、再びくっつけることです。
網膜剥離の治療には、症状の進行具合や網膜の状態に応じて、いくつかの方法が選択されます。初期段階であれば、レーザー治療が適用されます。しかし、網膜がすでに広範囲にはがれている場合は、より高度な手術が必要になります。
・レーザー治療
網膜に小さな裂孔や小規模な剥離がある場合に適応となります。網膜の裂孔の周りにレーザーを照射し、熱で焼き固めることで、網膜がそれ以上剥がれないようにします。
・硝子体手術
眼球内の硝子体というゼリー状の物質を取り除き、網膜を元の位置に戻すための処置が行われます。さらに、気体やシリコンオイルを注入することで、網膜を適切な位置に固定し、治癒を促します。
・強膜バックリング手術
眼球の外側にある強膜(白目の部分)に、シリコン製のバンドやスポンジを縫い付けて、眼球の形を少しへこませます。これにより、剥がれた網膜にかかる引っ張る力を弱め、網膜が元の位置に戻りやすくします。
網膜剥離は、放っておくと失明につながる可能性もある病気です。特に、飛蚊症が急に増えたり、光が見えたりする症状が出た場合は要注意です。見え方に異常を感じたら、早めに眼科を受診することが大切です。